研究課題
本年度は前年度に引き続き、CD4T細胞機能制御におけるIL-15や、それとレセプターやシグナル分子を共有するIL-2の作用について解析した。またCD8T細胞を介した免疫寛容機構に置けるIL-15の役割についても検討した。IL-2レセプターからのシグナルは、IL-17を産生するTh17サブセットの分化に抑制的に働くと現在一般的に考えられている。しかし我々がIL-2レセプター欠損細胞を用いて、生体内での免疫反応を解析した結果、これはT細胞サブセット間のIL-2の細胞増殖シグナルに対する感受性の相対的な差に起因する見かけ上の抑制であることが分かった。すなわちTh1はその生存がIL-2レセプターシグナルに高く依存しているのに対し、Th17細胞はIL-2シグナル非存在下でも細胞数にほとんど変化を生じなかったため、割合が減少していたのであった。これはIL-2産生阻害作用を有するシクロスポリンAやFK506(プログラフ)が関節リウマチ等の炎症性疾患に臨床的に有効であることとも矛盾しない。一方、免疫制御性CD8T細胞については、IL2/15レセプターβ鎖を発現することが以前より知られていたが、最近その中でもCD279を発現する細胞亜群に免疫抑制活性が存在することが示された。そこで、これらの細胞の分化について調べた結果、IL-15依存性が他のCD8T細胞サブセットより低いことが明らかになった。すなわち、IL-15によりCD8T細胞の活性化バランスが制御されている可能性が考えられた。
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