研究概要 |
人工膝関節手術施行時に採取したヒト関節リウマチ患者と変形性関節症患者の滑膜組織よりRNAを抽出してポリコーム遺伝子の発現を定量的PCRで比較した。ヒト骨肉腫細胞株、正常骨芽細胞および骨肉腫患者生検組織を用いて定量的PCR法、免役染色法によりポリコーム蛋白の発現と、ヒストンのメチル化について比較検討した。またshRNA,siRNAを用いてBMI-1,EZH2をノックダウンして骨肉腫細胞の増殖・細胞死への関与を検討した。 関節リウマチ滑膜組織では変形性関節症の滑膜組織と比較してポリコーム蛋白であるBMI-1,EZH2の発現が上昇していた。さらにヒト骨肉腫培養細胞・骨肉腫患者生検組織ともに正常骨芽細胞・正常骨組織と比較してポリコーム蛋白の発現が上昇していた。特にBMI-1とEZH2の発現上昇が定量的RT-PCR民免疫染色にて観察された。さらにトリメチル化ヒストンの上昇も免疫染色にて細胞株・患者組織にて観察された。これらの結果よりRA滑膜組織やヒト骨肉腫組織の異常増殖にポリコーム蛋白が関与している可能性が示唆された。予想に反してBMI-1とEZH2をノックダウンしてもin vitro,in vivoにおいて骨肉腫の増大に変化は認められなかった。 関節リウマチ患者滑膜細胞、骨肉腫細胞株、臨床検体においてEZH2、BMI-1の発現上昇を認めた。骨肉腫においてHistone H3-K27のtrimethyl化による転写抑制により遺伝子の不活性化が起こっている可能性が示唆された。既に報告されている他の悪性腫瘍とは違い、BMI-1,EZH2をノックダウンしても腫瘍形成抑制作用は認められなかったが、EZH2、BMI-1などのポリコーム蛋白質は関節リウマチや骨肉腫の鑑別、腫瘍マーカーとして有用である可能性が示唆された。
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