研究課題/領域番号 |
20591790
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研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
加藤 直樹 埼玉医科大学, 医学部, 講師 (90448895)
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キーワード | 骨代謝 / p38MAPK / Pax6 / 転写因子 / 破骨細胞 / 神経再生 |
研究概要 |
我々は、骨代謝、リモデリングにおける神経系制御に着目し、転写因子であるPax6や、これを活性化するMAPキナーゼ(MAPK)と呼ばれるSer/Thrリン酸化酵素の1つであるp38MAPKを中心に研究を行ってきた。これまでp38MAPKは、その遺伝子破壊マウスが胚性致死をきたすため、個体レベルでの生理的機能については不明のままであった。そこで我々はp38の転写因子を介するシグナル伝達経路の活性化が維持され、酵素を介するシグナル伝達のみを阻害するノックインマウス(semマウス)、活性型p38を過剰発現してシグナル伝達が増強された遺伝子組み換えマウス(DDマウス)を作製し、骨代謝および神経再生の両面から個体レベルでのp38MAPKの機能について詳細に検討してきた。まず骨代謝について検討したところ、骨密度は野生型と比較して、semマウスで高く、特に海綿骨では有意差を認めたが、DDマウスでは野生型と比較して有意差を認めなかった。また細胞培養の結果から、こうした骨密度の増加は破骨細胞の分化阻害により生じていると思われた。次に神経再生におけるp38MAPKの生理的機能について検討し、semマウスでは神経組織の成長には影響が出ないが、損傷後の神経再生は組織学的にも機能的にも遅延することを確認した。一方、DDマウスの神経再生はsemマウスより促進されたものの、野生型と比較して遅延していることを確認した。p38MAPKは炎症の制御分子として、また、炎症治療の分子標的として注目されており、神経損傷後の炎症はWallerian変性とその後の神経再生において不可欠であることが知られている。そこで、炎症性サイトカインであるTNFαおよびIL-1βの発現に着目した。その結果、semマウスではTNFαおよびIL-1βの発現パターンが野生型と異なる事を見出した。加えてWallerian変性の指標となるCaspas6-3や神経再生の指標となるTenascin-Cについても検討し、TNFαおよびIL-1β同様、その発現パターンが異なる事を見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
p38MAPKが個体レベルで骨代謝および神経再生に影響を与える事を確認出来た。
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今後の研究の推進方策 |
こうしたp38MAPKが関わる骨代謝および神経再生の変化について、その作用機序について検討したい。
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