Glial cell line-derived neurotrophic factor(GDNF)は神経細胞、アストロサイトから産生される神経栄養因子のひとつで、中枢神経系の神経保護において重要な役割を担っている。炎症性サイトカインinterleukin-1β(IL-1β)はラットグリアC6細胞においてGDNFを産生することが知られている。われわれはグリアC6細胞において、IL-1βによって惹起されるGDNFの遊離機序を検討した。その結果、1.IL-1βは時間、濃度依存性にGDNFの遊離を促進した。2.IL-1βはSTAT3、p38MAP kinase、p44/p42MAP kinase、stress-activated protein kinase/c-Jun N-terminal kinase(SAPK/JNK)、IκBのリン酸化を促進した。3.IL-1βによるGDNFの遊離はJanus fmily of tyrosine kinase inhibitor 1(STAT3活性化kinase阻害剤)、SB203580(p38 MAP kinase阻害剤)、PD98059(p44/p42MAP kinase活性化kinase阻害剤)、wedelolactone(IKK阻害剤)によって抑制されたが、SP600125 (SAPK/JNK阻害剤)には影響を受けなかった。GDNFは中枢神経保護作用の他、中枢神経系の分化、発達、神経変性疾患、認知機能、麻薬中毒、神経障害性疼痛などに関与していると考えられており、今後、グリア細胞からのGDNF遊離に対する麻酔薬の影響を検討することにより、麻酔薬の中枢神経における作用を解明することができると考えられる。 結論)グリア細胞においてIL-1βはSTAT3、p38 MAP kinase、p44/p42 MAP kinase、IκBの活性化を介してGDNFの遊離を促進することが示唆された。
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