研究概要 |
脳血管周囲に存在するアストロサイト内には、アクアポリン-4(AQP-4)の局在が認められ、このAQP-4は脳浮腫の形成に関与していると報告されている。グルタミン酸受容体作動薬の脳血管に与える影響を検討する上でAQP-4の発現を免疫染色法を用いてその局在を検討し、その局在が、全身麻酔薬(吸入麻酔薬および静脈麻酔薬)によってどのように異なるかを検討することを目的とした。使用する全身麻酔薬の違いによって、グルタミン酸受容体作動薬に対する脳血管反応性の差異を検討することや、AQP-4の発現を検討することにより、疾患による適正な使用麻酔薬の選択が可能になり、また全身麻酔中の種々の合併症発症時の対策にも有効であると考える。このような背景からラットを対象に全身麻酔薬として吸入麻酔薬のセボフルランと静脈麻酔薬のプロポフォールを使用して比較検討を行った。ラットを対象として、ハロセン麻酔下に気管切開を行い、酸素化空気にて動物用人工呼吸器を用いて、終末呼気二酸化炭素分圧を35〜40mmHgに維持するように調節呼吸を行う。また、直腸温は、ブランケット(小動物体温保持装置;Bio Research Center Co., Ltd.、BWT-100)を用いて36.5〜37.5度に維持する。直接動脈圧測定用、および血液分析用採血路として尾動脈に、輸液および薬物投与路として大腿静脈に静脈路を確保する。全てのプレパレーションが終了した時点から全身麻酔薬(セボフルランおよびプロポフォール)の投与を1時間施行したのち、脳標本を取り出しAQP-4の免疫染色を行った。本年度はAQP-4の発現を免疫染色法を用いて定性的に検討を行っている段階であり、麻酔薬の違いによるAQP-4の定性的な検討では明らかな差異が認められない傾向を観察している。
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