本年度はまず、体重30kg前後のブタを麻酔下に脱血して出血性ショックモデルを作成し、吸入麻酔薬の体動抑制効果の指標であるMACに対する、出血性ショックの影響を検討した。 <方法>麻酔下のブタの病態を以下の順に変化させ(途中に出血、輸液、ナロキソン投与をしていった)、おのおのの病態でMACを測定した。 (1)コントロール 次に循環血液量の30%(21ml/kg)の脱血 (2)30%出血 次に21ml/kgの膠質液(HES製剤)投与 (3)30%出血+輸液蘇生 次にナロキソン投与(0.1mg/kg静注) (4)30%出血+輸液蘇生+ナロキソン投与 <結果>イソフルランのMACは上記おのおのの状態で(1)2.05±0.28%(2)1.50±0.51%(3)1.59±0.53%(4)1.96±0.26%と変化した。MACは出血性ショックによって明らかに低下した。輸液は出血性ショックの血行動態抑制を明らかに改善した。しかしMACの低下は輸液によって改善せず、ナロキソン投与によってリバースされたことから、MACの低下は血行動態の悪化によるものではなく、出血性ショックによって放出される内因性オピオイドが原因であることが本年度の実験結果から示唆された。
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