研究概要 |
虚血により過剰なカルシウムがミトコンドリアに流入するとミトコンドリア外膜と内膜に孔が開き、透過性亢進によりミトコンドリアが膨化する。ミトコンドリアへのカルシウムの流入を抑制し、ミトコンドリアの機能障害を軽減することが重要である。 平成20年度はカリウムチャンネルオープナー(ダイアゾキサイド)がミトコンドリア電位に及ぼす影響、ミトコンドリア電子伝達系(酸化還元電位)に及ぼす影響を明らかにした。カリウムチャンネルオープナー(濃度組成、1mmol/l in1.5mmol/lNaOH, 150mmol/lNaCl)を0.5μl/分の速度で大脳皮質に直接注入し、ミトコンドリア膜電位とミトコンドリア酸化還元電位を測定した。ミトコンドリア膜電位は490mmの青色光を2秒間脳表に照射し、膜電位標識色素(JC-1)の蛍光比(赤色蛍光590nm、緑色蛍光530nm)より求めた。ミトコンドリア酸化還元電位は365mmの紫外線を2秒間脳表に照射し、ミトコンドリア内NADHの蛍光強度(青色蛍光460mm)より求めた。 カリウムチャンネルオープナー投与によりミトコンドリア電位は直ちに低下し、約5分後には定常状態(コントロール値の51%)に達した。持続投与を終了すると直ちにコントロール値に服した。この間、NADH蛍光強度に変化は認められなかった。カリウムチャンネルオープナー投与によりミトコンドリア電位が低下したことは、ミトコンドリア膜電位形成にK+の濃度勾配が関与していることが示唆された。また、ミトコンドリア膜電位低下が低下してもNADH蛍光強度に変化を認めなかったことは、ミトコンドリア膜電位の変化は解糖系の活性化に影響しないことを示唆していると考えられた。
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