研究概要 |
1)CPVT型突然変異knock-inマウスのSR機能(Ca2+漏出,ドメイン連関)、心機能解析、およびダントロレンの効果をIn vitroおよびIn vivoで評価し、R2474Sのknock-in(KI)マウスにおける致死的不整脈の発現メカニズムを検討した。 ヒトのリアノジン受容体(RyR)突然変異を組み込んだR2474S-KIマウスは,安静時の心機能は正常であり、また,病理・形態的にも異常はなかった。しかし,ノルエピネフリン負荷またはトレッドミル運動負荷により容易に多源性心室頻拍(VT)が誘発され、ヒトのCPVTと非常に類似したモデルであることが示唆された。このモデルを使用したIn vitroの実験(Ca2+ spark assay)では、wild typeのマウスに比較して、R2474S-KIマウスでは、isoproterenol負荷で異常にCa2+ sparkの頻度が増大した。また、R2474S/+マウスの心筋より単離した心筋細胞では、低濃度のisoproterenol存在下でCa2+ spark頻度の増大とdelayed afterdepolarization (DAD)が出現したが、ダントロレン(1μM)の添加により、それらは完全に抑制された。さらに、蛍光消退実験で、cAMPの添加により引き起こされたRyR内のドメイン連関障害が、ダントロレン存在下で、是正されることが証明された。このことから、ダントロレンは、KIマウスおいて、RyR内のドメイン連関障害を是正することにより、RyRからのCa漏出を抑制し、その結果、DADやVTの発生を抑制するこを報告した(Uchinoumi et al,Cir Res, 2010 ; 106 : 1413-1424)。In vitro実験で得られた分子レベルでのダントロレンの作用機序が、正しいことを証明するために、In vivoでCPVTが抑制できるかどうかを検討した。R2474S/+miceでトレッドミルで誘発される多源性心室頻拍(CPVT)や、ノルエピネフリンで誘発されるCPVTは、ダントロレンのin vivo投与(lmg/kg ip,7日間)により完全に抑制された(Kobayashi et al, 2010, Circ J ; 74 : 2579-2584)。これらの結果から、基礎心疾患による致死的不整脈を有する患者において、ダントロレンによる心筋型リアノジン受容体を分子標的とした抗不整脈治療は、全く新しい不整脈治療となることが示唆された。
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