研究概要 |
本研究は,解糖系の中間代謝物であるfructose-1,6-diphosphate(FDP)の中枢神経系に対する保護作用を^<31>P-NMRにより明らかにすることを目的とする。平成20年度は以下の事項を実施した。 【脳虚血モデル(脱分極性負荷)に関する基礎的再検討】(北野,徳丸) 脳虚血に対するFDPの脳保護作用を解析するために,高カリウム液による灌流を行う(脱分極性負荷モデル)。その際の脳スライスのエネルギー状態を^<31>P-NMRにより詳細に検討した。高カリウム液で灌流すると脳スライスのエネルギー需要が増大するが,その44%はニューロンの興奮に由来することが示唆された。これにより,脱分極性負荷モデルにおけるFDPの脳保護作用の解釈に必要な知見を得ることができた。 【虚血-再灌流負荷モデルを用いたFDPによる神経保護作用の検討】(北野,徳丸) 虚血-再灌流負荷の前後にFDPを含む灌流液(1〜20mM)による灌流を行った群と対照群とで、虚血および虚血からの回復の過程のエネルギー代謝の状態を^<31>P-NMRによって比較した。年度後半より実験を開始し,FDPの脳保護作用を示唆するデータが蓄積されつつあるところである。 【行動解析の準備】(徳丸,横井)ラットの行動解析に必要な実験系を構築した。 【成果の発表および関連領域の調査】(北野,徳丸,横井) 第一報の発表(脳虚血モデルに関する基礎的検討)および関連する領域の調査のため,日本神経科学会(2008年7月,東京),グアニジノ化合物研究会(2008年10月,岡山),日本病態生理学会(2009年1月,所沢)に参加した。また,本課題と同様に^<31P>-NMRを用いた本研究グループの研究成果を論文発表した。
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