研究概要 |
【^<31>P-NMRによる脳エネルギー代謝の測定】(担当:北野,徳丸) エーテル麻酔下にラットを断頭,速やかに大脳スライスを作成し,酸素化した10mMブドウ糖加人工脳脊髄液(95% O_2+5% CO_2でバブリング)で灌流し,^<31>Pを観測核とする核磁気共鳴法(^<31>P-NMR)によりスペクトルを測定した。この実験系について,恒常的に改良を行った。 【FDPによる神経保護作用の脳虚血-再灌流モデルを用いた検討】(担当:北野,徳丸) 脳スライスに対する虚血-再灌流負荷の前後に1mMのフルクトース1,6-2リン酸(FDP)を含む灌流液による灌流を行った群と対照群とで,脳スライス中の高エネルギーリン酸であるクレアチンリン酸の回復を比較した。対照群では再灌流開始1時間後に負荷前の57±6%に,FDP添加群は71±3%にそれぞれ回復した(p<0.01)。アストロサイトに対する選択的毒性をもつfluorocitrateを灌流液に添加すると,両群の回復に差は認められなかった(p=0.643)。このことよりFDPの脳保護作用はアストロサイトに依存することが示唆された。また虚血負荷中に灌流液に含まれるFDPの濃度の低下が認められ,FDPがエネルギー基質として利用されていることが示唆された。 【電子スピン共鳴法によるFDPのラジカルスカベンジ能の測定】(担当:徳丸,横井) FDPのラジカルスカベンジ能を電子スピン共鳴法(ESR)により測定した。FDPにはhydroxylラジカルのスカベンジ能が認められ,EC_<50>は21.6mMと推定された。しかし,^<31>P-NMRで用いた濃度(1mM)ではスカベンジ能はほとんど認められなかった。 【研究のまとめ】(担当:北野,徳丸,横井) 3年間の研究の結果のとりまとめを行い,国内外の学会で発表を行い,関連分野の研究者と意見を交換した。現在,国際雑誌への論文の投稿の準備中である。
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