マウス断頭モデルによる実験をおこなった。 吸入麻酔薬の影響を調べるために、マウス断頭モデルにより、無麻酔状態のコントロールを設定した。本年度は、吸入麻酔薬イソフルレンおよびセボフルレンについて、無吸入コントロール、1MAC吸入、2MAC吸入をそれぞれ設定した。脳は-80℃で保存し、大脳皮質を冷凍作業ボックス内で摘出し、以後すべて氷温化にホモジネート、遠心分離を行い、シナプス膜成分(P2)、小胞体などの細胞内小器官とシナプス以外の細胞膜成分(P3)、細胞質成分(S3)に分画後、SDS-PAGEを行い、抗PKCγ抗体、抗リン酸化PKCγ抗体を用いてウェスタンブロットを行った。なお、ウェスタンブロットは近年開発されたレーザー励起式イメージングシステム“オデッセイ^[○!R]"を用いた。また、PKCγは虚血などにより分解されるため、分画前のホモジネートについて両抗体について調べたところ、コントロール、イソフルレン、セボフルレン吸入群で、有意差は認められなかった。このことは、PKCγが細胞内で再分布し、有意な分解を受けていないことを示している。イソフルレン、セボフルレン吸入により、PKCγはP2で減少し、S3で増加した。さらにリン酸化PKCγは、P2で増加した。このことは、吸入麻酔薬がPKCγの細胞質から細胞膜へのトランスロケーションを抑制するが、シナプス膜でのPKCγのリン酸化は増加することを示唆している。吸入麻酔薬がPKCに与える影響としては、活性化するという報告と、抑制するという報告があり、詳細は不明であったが、今回の我々の結果によって、これらの相反する報告が説明できる可能性がある。
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