本年度は、脳内輸送担体であるP-gpが脳虚血後にアポトーシス関連物質やサイトカインにいかに影響するかを、mdrlaノックアウトマウスの一過性局所脳虚血実験により調査した。 (実験方法)1)Mdrlaノックアウトマウスとワイルドタイプマウスによる一過性局所脳虚血モデルの作成:局所脳虚血はシリコンコーティングした6-0モノフィラメントを外頚動脈から挿入し、中大脳動脈起始部に留置、30分間虚血後、モノフィラメントを抜去し再灌流する。モデル作製中はレーザードップラー・フローメトリーを頭部に装着して中大脳動脈領域血流の変化を確認する。 2)脳虚血後脳内領域別及び経時的な免疫化学的測定: 再灌流後30分、3時間、6時間、12時間、24時間、48時間に麻酔下にて脳を取り出し、領域別に分けて冷凍保存。それをホモジネートしてから遠心分離等により分画ごとに抽出。それらのサンプルを使ってP-gp、Bclファミリー、ウェスタン・プロッティング法により検出。 また虚血後3時間・6時間に経心臓的に採血して血漿成分を抽出、そのサンプルからIL-1beta、IL-6などをELISA法により測定。(結果) Mdrlaノックアウトマウスでは正常マウスと比較して時間経過とともにBaxは低下Bcl-2は増加を示した。またIL-6はmdrlaノックアウトマウスでは正常マウスの約3分の1であった。以上の結果及び以前に報告したp-gpの存在が脳虚血後ダメージの大きさに影響するという結果を考慮すると、P-gpの存在が一部のアポトーシス経路を助長しまた、サイトカインの放出にも影響を及ぼし結果的に虚血後の組織障害の増加に繋がる可能性が示唆された。
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