研究概要 |
脳虚血におけるサイトカインの活性状況に対する、脳内トランスポーターP-gpの影響を検討 1)Mdr1aノックアウトマウスとワイルドタイプマウスによる一過性局所脳虚血モデルの作成:局所脳虚血は6-0モノフィラメントを外頚動脈から挿入し、中大脳動脈起始部に留置、30分間虚血後、モノフィラメントを抜去し再灌流する。2)脳虚血後血液内サイトカインの測定:虚血前、再灌流後に採血し、IL-1beta、IL-6,TGF-beta1などをELISA法により測定。結果、IL-6はノックアウトマウスにて有意に減少していたことが判明。IL-1betaやTGF-beta1には有意な違いが見られなかった。3)脳虚血後脳内領域別及び経時的な組織化学的確認法:再灌流後での脳組織にサイトカインの集積像を観察。今回の結果では陽性像の判別が困難であったため、正常マウスとノックアウトマウスにおける違いは結論に達しなかった。本年度よりLaser Speckle Imagingによる脳血流測定を開始、これにより虚血後の反復血流測定が可能となった。ここまでの結果ではノックアウトマウスと正常マウスにおける血流回復変化に違いが認められたが、今後はより詳細な検索が必要。 Mdr1a由来P-glycoproteinは薬物の脳組織内への浸透をコントロールしているが、虚血に対する影響やサイトカインなどの内因性物質への影響も報告されている。我々はこれまでノックアウトマウスを使用して、P-gpの存在が脳虚血のダメージに影響することを報告してきた。本年度の実験結果より、IL-6に対するP-gpの影響が大きく、このことが結果的に虚血脳においてP-gpが組織ダメージに影響を及ぼす一因と示唆された。これまでの脳虚血でのP-gpの影響に関する実験結果を加えて考察すると、虚血での脳内トランスポーター対策は脳保護に繋がる戦略と考える。
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