研究概要 |
外的環境変化に対し生体は迅速に応答・適応し、そのホメオスターシスを維持する。これら環境要因の変化に対する生体の応答反応をストレス応答と呼んでいるが、ストレス応答の際、組織・細胞レベルで誘導される一連の蛋白質が誘導されることが知られ、これをheat shock protein(HSP)あるいはストレス蛋白質と総称している。HSPはその分子量によって、高分子量HSPと低分子量HSPの2つのグループに分けられている。HSP27は低分子量HSPファミリーの一員であり、血管平滑筋および血小板を含む種々の組織に存在することが報告されている。しかしHSP27の生理的および病態における役割の詳細は未だ明らかとされていない。 血小板は血管が損傷を受けると速やかに粘着・凝集反応を起こし、この結果、血栓が形成され血管損傷部位が塞がれる。この生理的な止血機構において血小板が中心的な役割を担っていることは周知のことである。一方、種々の病態において病的な血栓形成がその発症のトリガーであると考えられており、この病的血栓形成においても血小板が重要な役割を果たしていると推測されている。しかし、その病的血栓形成の機序の詳細は未だ明らかではない。 今回,フィブリン活性化抑制物質であるアンチトロンビンIII(AT-III)の血小板に対する作用機序を解析することによって,凝固異常に対する新たな予防,治療法を確立することを目的として検討した。その結果、AT-IIIはヒト血小板に直接作用し,p44/p42 MAPKおよびp38 MAPKを介したHSP27のリン酸化を抑制し,ADP刺激によるplatelet-derived growth factor-AB及びserotoninの顆粒分泌とsoluble CD40 ligandの遊離を抑制することを明らかとした。
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