我々は初年度に虚血再灌流後の残存心筋細胞機能を心臓マイクロダイアリシス法による透析液中の神経伝達物質・逸脱蛋白酵素・グルコース等様々な物質について測定し、その物質毎に有用性を検討してきた。その結果、測定の簡便性や感度、特異度からミオグロビンが最も実験に適していることを確認した。その方法を用いて30分間の冠動脈閉塞と60分間の再灌流時のミオグロビン応答を測定し、心筋細胞膜傷害の指標として使用可能であることを証明した。さらに薬理学的細胞傷害を引き起こすシアン化ナトリウム(30mM)あるいはデシピラミン(100mM)を透析膜経由で投与することで透析液ミオグロビンが上昇し、血行動態によらない細胞傷害モデルを作成することに成功した。次に、虚血再灌流傷害による心筋バイアビリティを計測するために、コントロール(結紮なし)、3分間、30分間の冠動脈結紮を行ったのち、結紮解除3時間後のデシピラミン投与時の男透析液ミオグロビン濃度を測定した。その結果、3分間群はコントロール群と同レベルであったが、30分間群では低値を示した。この結果から、デシピラミン投与による残存心筋細胞を推測できる手法となり得ると考えられた。そこで、30分虚血前に虚血プレコンディショニング(3分間虚血3回繰り返し)を前処置後、30分間冠動脈結紮を同様に行った際のデシピラミン投与によるミオグロビン濃度応答は前処置しなかった群と比して上昇し、虚血プレコンディショニングが心筋バイアビリティを温存していると考えられた。現在は、この心筋バイアビリティと薬理学的心保護法(とくに麻酔関連薬剤)の関係を検証中である。
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