研究概要 |
昨年度,RYR1が導入されたHEK293細胞をより簡便に確認するために,GFPとRYR1が同時に発現するプラスミドを作成した.本年度は,昨年度に引き続きこのプラスミドを使用して,日本人で最も遺伝子変異が集中している2508番目のアミノ酸変異について,その変異が本当に悪性高熱症の原因となるかを調べた.2508番目のアミノ酸に関しては3つの変異が報告されている.昨年度,アルギニンからシステインへ変異(R2508C)したRYR1を遺伝子導入した細胞では、カフェインおよび4-クロロ-M-クレゾールに対する反応性が亢進しており,この変異が悪性高熱症の原因であることが確認された.この結果はEuropean malignant hyperthermia group(EMHG)に報告した.その後承認され,EMHGのホームページ上で公開されている(http://www.emhg.org/nc/genetics/mutations-in-ryr1/).残り2つのアミノ変異であるアルギニンからグリシン2508G)およびヒスチジン(R2508H)への変異に関しても,プラスミドを作成し実験を行なおうとしたが,R2508Gの変異させたプラスミドは作成できなかったのでR2508Hのみの実験を行なった.RYR1(R2508H)のカフェインに対する50%効果濃度(EC50)は正常:2.72±0.28,R2508H:1.39±0.17(mM)で,正常RYR1と比較してアルギニンからヒスチジンへのアミノ酸変異でも反応性が亢進していた.また,悪性高熱症よりもセントラルコア病に比較的多くみられるC末端側の遺伝子変異のうち臨床的に悪性高熱症と診断された症例から発見されたアミノ酸変異に関しても実験を行なっており,セントラルコア病でみられるアミノ酸変異でのカルシウム動態との相違についても検討中である.
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