研究概要 |
周術期に使用される各種麻酔薬は血管シグナリング因子や血管の反応性に影響を及ぼすため、血管新生にも影響を及ぼす可能性がある。多大な侵襲が加わる手術中や手術後長時間の鎮静を要する場合は使用される麻酔薬・鎮静/鎮痛薬の影響は大きいと推察される。本研究の最終目的は血管新生に及ぼす各種麻酔薬の影響、さらにそのメカニズムを調べることであり、今年度はラットin vivoモデルを用いた研究と臨床研究のまとめと培養細胞を用いたin vitro研究を行った。 In vitro実験はラット培養血管平滑筋(A10)細胞を用いた。A10細胞を各種麻酔薬(プロポフォール:10^<-6>,10^<-5>,10^<-4>M、ケタミン:10^<-6>,10^<-5>,10<-4>M、ミダゾラム:10^<-6>,10^<-5>,10<-4>M、ジアゼパム:10^<-6>,10^<-5>,10<-4>M)に暴露させ、12時間ごとに72時間まで検体を採取し、A10細胞からのVEGF放出をVEGF enzyme-linked immunosorbent assay kitで測定した。プロポフォールとケタミンがVEGFに及ぼす影響は少なかったが、ミダゾラムとジアゼパムはややVEGF放出を刺激する傾向を示した。周術期のミダゾラムとジアゼパムの長期投与により血管新生が促進される可能性が示唆された。血管新生に及ぼす麻酔薬・鎮静薬の影響が解明されることにより、周術期管理法の新たな指標となることが期待される。
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