研究概要 |
モルヒネと同様に麻薬に指定されている乖離性麻酔薬のケタミンを慢性投与しラット脳内においてDセリン量、Dセリン関連タンパク質量、およびそれらの遺伝子発現変化について解析し、ケタミン繰り返し投与(慢性投与)による精神症状の発現と内在性Dセリンとの関連性を明らかにする目的で、ケタミンを慢性投与し、脳内のDセリン合成酵素のセリンラセマーゼ(serine racemase)と同分解酵素のDアミノ酸酸化酵素(D-amino acid oxidase)のmRNA量、タンパク質量、およびDセリン量がどのように変化するかについて解析した。 50mg/kg/dayケタミンを14日間慢性投与し、常同行動の増加(Turning, Waeving, Headbobingの各回数が増加)し、自発運動量が増加するといった統合失調症様の異常行動が認められた。異常行動が観察されたラットにケタミンを最終投与してから2時間後に断頭し、線条体、海馬、大脳皮質、間脳、中脳、橋・延髄、小脳をサンプリングし以下の実験に供試した。その結果、セリンラセマーゼmRNA量が線条体、海馬、大脳皮質、間脳において減少した。また、Dアミノ酸酸化酵素mRNA量が中脳において増加した。これらのmRNA量発現変化はDセリンを脳内で減少させる方向に進むことを示唆した。これらの結果は、ケタミン慢性投与により生じる統合失調症様の症状の発現に脳内Dセリンの減少が寄与することが考えられた。今後は、脳内Dセリン量の測定を行う予定である。
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