研究概要 |
3年の研究期間の初年度にあたるH20年度には以下のことを確立・検証した。 1.マウスにおける肺動脈圧測定法を確立した。この実験系では、この技術が必須であるものの、測定技術の習得には難渋した。いろいろな方法を試みた結果、安定した実験が可能になった。麻酔下の開胸による測定では、平均動脈圧が95±5mmHg,平均肺動脈圧が18±3mmHgであった。これらの値は、これまで文献で報告されている値とほぼ同様であった。ただし、肺動脈圧測定技術の獲得に時間を要したため、当初予定したマウス肺高血圧モデルを確立するための実験は行えなかった。 2.当実験室で確立したラット肺高血圧モデル(幼若ラットにMCT60mg/kg投与すると50-70%の肺高血圧に進展する)に対して、転写因子KLF5の活性を抑制するタミバロテンを投与し、肺血管リモデリングの進展を阻止できるかどうか検討した。KLF5は血管リモデリングに関与する重要な転写因子なので、KLF5を抑制するタミバロテンが血管リモデリングを抑制し、その結果肺高血圧への進展を防ぐと仮定した。しかし、タミバロテンを、0.1mg/kgから10mg/kgまでの範囲で投与したが、MCTによって誘発された肺高血圧への影響は認められなかった。この結果をもとに、マウス肺高血圧モデルにおいて、KLF5の関与を検証する研究には再考が必要であると推測した。
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