3年の研究期間の2年度にあたるH21年度には以下のことを確立・検証した。 1.核内転写因子EGR-1に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドを不活化ウイルスのエンベロープに包埋し、IV投与により肺血管に取り込ませることで、ラット肺高血圧におけるリモデリングを抑制することを検証した。この結果を英文論文としてまとめ、American Journal of Respiratory and Critical Care誌に投稿した。査読の結果は、rejectであったが、多くの有益なコメントをもらった。現在、そのコメントに沿って、追加実験を行っている。 2.マウスを17%の低酸素室で3週間管理しても肺高血圧にはほとんど進展しない。しかし、植物毒であるモノクロタリンを投与したのち、低酸素室に3週間管理すると、高度の肺高血圧(右室圧にして200%増し)に進展することがわかった。しかしながら、この方法では生存率が50%前後であり、マウスの肺高血圧モデルの安定化には条件設定に改善の余地があると結論した。現在、モノクロタリンの量を調整することを考慮中である。 3.先天性心疾患を持った妊婦は、多くが肺高血圧の状態である。これらの患者は臨床における肺高血圧モデルととらえることができる。これらの患者は、時に、帝王切開を受けることがあり、麻酔が必要となる。これらの患者群を対象に、周産期における母子の予後についてchart reviewを行った。その結果を論文にして投稿した。Anesthesiology誌にはrejectされたが、International Journal of Obstetric Anesthesia誌には、一回目の査読で改訂を要求され、現在原稿の書き直しを行っている。
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