一次感覚ニューロンに含まれるSP(substance P)、CGRP(calcitonin gene-related peptide)、STT(somatostatin)などの神経ペプチドの脊髄後角ニューロンに対する生理作用については不明な部分が多い。我々はラットの脊髄新鮮スライス標本を用いて、ブラインド・ホールセル・パッチクランプ法によりこれらの問題について検討している。 SP(1μM)のbath applicationは、後角深層(III縲弖I層)の約60%のニューロンにslow inward currentを誘導した。このslow inward currentは、記録しているニューロンにSPが直接作用したものと考えられている。CGRP(1μM)のbath applicationもまた、後角深層の約30%のニューロンにslow inward currentを誘導した。STT(1μM)のbath applicationは、後角深層の約30%のニューロンにslow outward currentを誘導した。これらのニューロンの全ては、SPに反応を示した。このように、深層ニューロンの約60%がこれらのペプチドに応答する性質を有することがわかった(残りの40%のニューロンはこれらの神経ペプチドに応答しない)。一方、脊髄後角II層(Substantia Gelatinosa;SG)のニューロンは、これまでの他者の結果も含めて、興奮性の神経ペプチドに対してexcitatory post-synaptic potential(EPSP)の増加やslow inward currentを示さない。これらの結果は、侵害受容ニューロンがSGニューロンと深層ニューロンにmonosynapticに入力しているが、神経ペプチドを介する情報は深層ニューロンにのみ伝達されることが分かった。
|