研究課題
具体的内容今年度、ヒト腎癌(6症例)から正常血管内皮細胞(NEC)と腫瘍血管内皮細胞(TEC)を分離培養し血管内皮細胞からのRNAをreal-timePCRによって解析した。これまでマウス腫瘍モデルのマイクロアレイから発現が亢進していた遺伝子がヒトでも同様に高発現していることが確認された。例えば、薬剤耐性や細胞の生存能に関わる遺伝子MDR1やAkt,VEGFAなどがヒトTECにおいても高いことが見出された。これらの遺伝子発現やシグナル伝達経路を考慮して、血管新生阻害療法剤として将来利用が可能と思われる薬剤数種に対するマウスTECの感受性を解析した。Paclitaxelの排出に関わるMDR1/p-gpの発現がTECで高かったため,p-gp阻害剤であるverapamilを用いると,TECの薬剤pachtaxelに対する感受性が上がることが示された。またTECに発現が高い分子のノックダウンによって特異的にTECの遊走が落ちることなども示された。意義これまでにマウスの腫癌モデルのマイクロアレイから発現が亢進している遺伝子が、ヒト腎癌由来特異的腫瘍血管内皮細胞にも同様に発現していること、またそれに由来するTECの生物学的特徴を明らかにすることができた。具体的には、既存の抗癌剤(Paclitaxel)感受性がTECにおいて高く、そのメカニズムの一つとしてとしてMDR1/p-gpの発現の亢進が上げられること。また、TECに発現の高い遺伝子の阻害による遊走の抑制など生物学的変化を解析・評価できたことは、今後の癌の進展・転移をいかに抑えるかという新規薬剤の開発に求められる情報である。これらの治験により、新たな腫瘍血管新生阻害開発に際してのスクリーニング評価系確立に一歩近づいた。重要性NECに対してTECに高発現する遺伝子をヒトにおいても明らかにできたこと、かつその遺伝子がTECの生物学的な特徴を制御することがIn vitroにおいて確認された。今後、癌治療を目的とした新たな血管新生阻害剤の効果をスクリーニングする際にはTECを用いることが重要であることが示された。
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