研究課題
非浸潤性膀胱癌に対するBCG療法は有効な治療法であるが、BCG生菌感染に由来する副作用の存在が依然残存している。申請者はBCGを物理的に破壊し菌体成分とすることにより、効果は生菌と同等で副作用の少ない新たなBCGをつくることを目指してきた。本研究ではこのナノパーティクルBCGという新たな治療薬の有効性を広汎に実証することを目的とする。これまでの検討から、BCG生菌とナノパーティクルBCGは作用機序が異なることが示唆されている。平成21年度は、BCG生菌が直接効果を示さない細胞株を用いて検討を行った。筋層非浸潤性膀胱癌由来のKK47細胞に糖転移酵素であるcore 2 N-acetylglucosaminyltransferase(C2GnT)遺伝子を導入したKK47C2GnT細胞、浸潤性膀胱癌由来のBOY細胞、前立腺癌由来のPC-3細胞を用いて検討した。KK47細胞はBCG生菌と混合培養すると無添加のコントロールに比して生細胞数は有意に低下し、直接効果を示した。一方、KK47C2GnT細胞はBCG生菌と混合培養しても生細胞数に変化はなく、直接効果を示さなかった。BOY細胞、PC-3細胞でもBCG生菌による直接効果は認められなかった。これに対し、ナノパーティクルBCGはKK47C2GnT細胞、BOY細胞、PC-3細胞に対してCW、CM、mixいずれも生細胞数低下効果を示し、直接効果が認められた。いずれもCMでの効果が最も高かった。糖転移酵素の導入により細胞表面の糖鎖構造が変化し、BCG生菌の接触や内在化が阻害され、BCG生菌は直接効果を示さなくなったと考えられた。一方、ナノパーティクルBCGはナノメートルサイズとしたことにより接触や内在化が阻害されず、直接効果を示すと考えられた。ナノパーティクルBCGの生菌無効例への治療薬としての可能性が示唆された。
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泌尿器科紀要
巻: 56 ページ: 551-557
日本臨床 68(Suppl 4), 323-326
巻: 68Suppl4 ページ: 332-326