非浸潤性膀胱癌に対するBCG療法は有効な治療法であるが、BCG生菌感染に由来する副作用の存在が依然残存している。申請者はBCGを物理的に破壊し菌体成分とすることにより、効果は生菌と同等で副作用の少ない新たなBCGをつくることを目指してきた。本研究ではこのナノパーティクルBCGという新たな治療薬の有効性を広汎に実証することを目的とする。 これまでの検討からナノパーティクルBCGはBCG生菌が無効なKK47C2GnT細胞、浸潤性膀胱癌由来のBOY細胞、前立腺癌由来のPC-3細胞に対して直接効果を示すことが明らかとなっている。 平成22年度は、さらに多様な細胞株で検討を行った。まず、正常細胞への影響を検討するため、正常繊維芽細胞NHDFを用いて検討したところ、NHDFの増殖には影響しないことが明らかとなり、安全であることが示唆された。BCG生菌無効の細胞株を検索したところ、腎癌由来のACHN細胞もBCG生菌が無効であることが明らかとなった。しかし、ACHN細胞はナノパーティクルBCGも効果を示さないことも明らかとなった。ナノパーティクルBCGの調製条件(温度、超音波処理による分散等)の検討を行ったが、効果は示されなかった。さらに、ナノパーティクルBCGからさらに精製した成分であるLM(リポマンナン)等で検討を行ったが、効果は示されなかった。 ナノパーティクルBCGの正常細胞への安全性が示されたが、反面必ずしも全ての腫瘍細胞に対して効果を有するわけではないという問題点も明らかとなった。
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