研究概要 |
モノクローナル抗体RM2は悪性度を反映して前立腺癌細胞に対する反応が高くなる。そして、RM2が規定するハプトグロビンベータ鎖は、前立腺癌に対するRM2の反応性のほとんどを担っている。そこで、RM2が規定するハプトグロビンベータ鎖の機能的役割を解析するため、平成20年度に前立腺癌細胞をモノクローナル抗体RM2で処理することにより、増殖能の低下、足場依存性および非依存性増殖能の低下、アポトーシスの低下、運動能および浸潤能の低下が観察された。さらに、5-AzaやPBAにより前立腺癌細胞を処理したところ、RM2が規定するハプトグロビンベータ鎖の発現低下とともに、悪性形質に関連したシグナル伝達分子は発現レベルの低下がみられ、がん抑制に関与するシグナル伝達分子はその発現が増加していた。これらの結果は、RM2が規定するハプトグロビンベータ鎖がシグナル伝達分子と密接に関わることにより、前立腺癌細胞の悪性形質発現に関与することを示唆している。 平成21年度はRM2により処理した前立腺癌細胞のシグナル伝達分子をある程度網羅的に調べた。その結果、まず注目すべきものとして、RasおよびのAkt発現低下がPC3,DU145において観察された。その他、SrcおよびFAKの発現低下がLNCaP,PC3で認められた。また、LNCaP,PC3,DU145でBcl-2の発現レベルが低下し、STAT3の発現レベルも低下した。一方、がん抑制に関与するp16は発現レベルの増加が観察された。以上から、RM2が規定するハプトグロビンベータ鎖は、Ras→Akt pathway、Src & FAK pathwayのほか広くシグナル伝達分子の発現レベルに影響を及ぼしていることが示唆された。 現在、RM2が規定するハプトグロビンベータ鎖と相互作用する分子について研究中である。
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