研究概要 |
平成21年度はRM2により処理した前立腺癌細胞のシグナル伝達分子をある程度網羅的に調べた。その結果、まず注目すべきものとして、RasおよびのAkt発現低下がPC3,DU145において観察された。その他、SrcおよびFAKの発現低下がLNCaP,PC3で認められた。また、LNCaP,PC3,DU145でBcl-2の発現レベルが低下し、STAT3の発現レベルも低下した。一方、がん抑制に関与するp16は発現レベルの増加が観察された。以上から、RM2が規定するハプトグロビンベータ鎖は、Ras→Akt pathway、Src & FAK pathwayのほか広くシグナル伝達分子の発現レベルに影響を及ぼしていることが示唆された。 以上の結果から、上位にあるレセプターへのRM2の関与が考えられたため、平成22年度はRM2が規定するハプトグロビンベータ鎖と相互作用する可能性のある分子について研究した。 RasやSTAT3の発現レベルが変化したことから、それらを制御しうる可能性のある分子として、EGFRが考えられた。LNCaP,PC3,DU145のcell lysateをRM2で免疫沈降し、抗EGFR抗体で検出したところ、3種類の前立腺癌細胞株すべてにおいて、バンドが検出された。すなわち、RM2が規定するハプトグロビンベータ鎖がEGFRと相互作用をしていることが示唆された。さらにRM2により、これら3種類の細胞株を刺激すると、EGFRの細胞内への移動が増加することが示された。PC3,DU145におけるEGFRの細胞内への移動は、脳2刺激後、5minでピークになるのに対して、LNCaPにおけるそれは30minでピークになるという違いが見られた。これらの結果から、RM2が規定するハプトグロビンベータ鎖は、EGFRとの相互作用を通して、Ras→Akt pathwayを刺激し、STAT3の発現を上昇させ、悪性形質発現に関与しているが、RM2により相互作用がブロックされることが示唆された。
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