研究概要 |
食生活の欧米化にともなう、血清中の脂質環境の変化は、血清中のコレステロール濃度の変化のみにと拶まらず、副腎のコルチゾール、コルチコステロンなどの糖質コルチコイド濃度の変化をもたらし、血清中・精巣中・前立腺組織内の性ホルモン濃度の変化をきたす。今回血清中のホルモンの一斉分析で12項目のホルモン濃度を測定することにより、日本人の性ホルモン環境と前立腺癌の発症の関連性を検証することが、本研究の大きな目的である。前立腺癌症例60例と、平均年齢を適合させた非癌症例20例を抽出し、血清中のエストラジオール,テストステロン,DHT,アンドロステンジオン,プロゲステロン、プレグネノロン、DHEA,エストロン,コルチゾール,コルチゾン,コルチコステロン,11-デオキシコルチコステロンの測定を行い、前立腺癌症例と非癌症例の内分泌環境の比較を行なった。癌と非癌症例で、コルチゾン(E)濃度は有意に癌症例において高くなった。その他、コルチゾール(F)なかった。血清中のホルモンバランスに関しては、F/E比はF検定で等分散を示し、非癌症例では4.13±0.96と、癌症例の2.75±0.84と比較し有意に高くなり、さらにはDHT/(F/E)は癌では4.13±0.96と、癌症例の2.75±0.84と比較し有意に高くなり、さらにはDHT/(F/E)は癌症例で0.24±0.11と非癌症例の0.13±0.07と比べ有意に高くなった。以上より、性ホルモンの代謝経路のうち、11β水酸化酵素の活性が低下によって上記のホルモンバランスの変化が生じて癌の発症危険率が高くなっている可能性が示唆された。今後、症例対照研究によって、癌症例と非癌症例の過去の血清を用いて、内分泌環境の差を分析する事で、前立腺癌の発症に関運す夢内分泌学的な予後因子が解明できる可能性がある。
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