研究概要 |
膀胱癌に対する尿中腫瘍マーカーとしてBTA(bladder tumor antigen)やNMP22(nuclear matrix protein 22)が用いられるようになったが、尿細胞診の診断率を超える有効性は認められておらず、膀胱癌に対する新規腫瘍マーカーの開発および本研究はこの問題に対してプロテオーム解析技術を用いて膀胱癌に対する新規腫瘍マーカーを同定し、臨床応用することを目的としており、(1)機能解析[馬場,松本,田畑,大草]組織で新規マーカー候補とした蛋白質は、その機能が解明されていないものも多く、癌との関連性を示した報告も少ない。このため上記過程で癌と正常粘膜で有意差が認められた蛋白質について特異的siRNAを用いてノックダウンした膀胱癌培養細胞を作成し、癌発育における蛋白質の機能を検討した。 (2)ELISA法による定量[馬場,松本,田畑,大草] ウエスターンブロッティングで健常者尿と比較し、膀胱癌患者尿で発現量が増加した蛋白質(現時点では1種類確認)について、膀胱癌患者尿、健常者尿中での発現量をELISA法で定量し、臨床的有用性を検討。膀胱癌患者については各病理学的ステージ(CIS:10例、pTa:10例、pT1:10例、pT2:10例、pT3以上:10例)の患者尿と非膀胱癌患者尿(健常者:20例、膀胱炎や尿路結石患者などの炎症性疾患患者尿:10例)で検討を行なった。 (3)膀胱癌患者血清マーカー候補蛋白質の同定、評価[小寺,大草] 血清中のペプチド成分を比較し、患者と健常者血清でMSピークに違いの認められたものを探索。こうして待たマーカー候補ペプチドをMALDI-TOF/TOF MSを使ったタンデムMS(MS/MS)測定で同定した後、ペプチドの安定同位体標識ペプチドを合成し、内部標準として用いて定量解析をした。これによってマーカーとしての可能性を多検体で評価した。
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