研究概要 |
本年度は、ヒト膀胱癌細胞株(KK47, 5637, T24)に対する腫瘍特異的MKプロモーターを組み込んだ制限増殖型アデノウイルスベクター(AdMKEla)の導入効率を検討するために、まず5型アデノウイルスの配列を有するプラスミドベクター(pXCl:Ela geneを含む)から492〜552bp領域を欠損させ(pXC1-491プラスミド)、このpXCl-491プラスミドにMKプロモーター(595bp)をライゲーションさせてpXC1-MKプラスミドを作製し、293細胞を用いてpXC1-MKプラスミドとE3領域を持つアデノウイルスDNAのpBHGE3との相同組み換えを行うことで、目的のウイルスベクター(AdMKEla)を作製した。さらに293細胞を用いて、作製されたAdMKElaを増殖させアデノウイルスベクターを精製し、TCID50法にて精製ウイルスタイターを測定した。また、PCRを行うことで、ワイルドタイプアデノウイルスの混入がないことを確認した。 次に、定量的リアルタイムQ-PCR法により各細胞株におけるCARmRNAの発現を検討し、各細胞株におけるアデノウイルスベクターの導入効率を検討するために、Ad5-CMV-βgalを感染させ、βgal染色法で導入効率を検討した。その結果、KK47,5637においては、それぞれ3.4×10^<10>btu/ml、2.2×10^9btu/mlと高い導入効率を認めた。一方、T24においては、1.0×10^7btu/mlと導入効率は低かった。 以上より、KK47、5637と比較してT24においては、AdMKElaによる抗腫瘍効果は期待できないことが予想されるため、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤であるバルプロ酸ナトリウム(Valproic Acid; VPA)を併用することで、アデノウイルスベクターの導入効率の向上および遺伝子治療効果の増強を検討する必要性があると考えられた。
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