研究概要 |
低血清培養の有用性を明らかにするためにラット下肢虚血モテルに同糸の皮下脂肪由来幹細胞(ADSc)を注入すると明らかな血流増加を認めた。In vitroにおいて正常状態よりも虚血状態の方が明らかにVGEFの分泌が多いことを明らかにし、再生環境にってADScはパラクリン作用を発揮してニッチを整えることを行っていることを明らかにした。ラット慢性腎障害葉酸腎障害モデルを対象に同系のADScを腎臓皮膜下に注入治療を行った。その結果細胞投与2-3日目にコントロール群と比較して血中Crn,BUNの上昇の抑制すなわち腎保護作用を認めた。その細胞を注入した皮膜下のニッチとしての微小循環すなわち尿細管集毛細血管も同様にADSc注入群はコントロール群と比較して有意な血流増加を認め、腎保護作用とともにニッチに関与しているものと推測された。またヌードラット慢性障害モデルにヒト脂肪由来幹細胞被膜下に注入治療を行うと同様の腎保護作用と注入後1ヶ月の状態でも腎被膜下にヒト脂肪由来幹細胞の細胞塊が存在し、サイトカイン分泌を含んだ機能を行っている状態が推測された。さらに、注入した多分化能を有するADRCsは効果を発揮する以外の臓器構成エレメントとしての筋肉、骨そして脂肪には分化しなかった。注入したADRCsはそのレシピエント側の環境すなわちニッチによって適切な分化誘導が行われているものと推測された。 このことは現在臨床研究として行っている腹圧性尿失禁症例に対する脂肪組織由来幹細胞治療において細胞注入後のMRI検査でも言えることで、基礎研究臨床研究においてそのニッチの状態を確認し、それはひいては脂肪組織由来幹細胞治療の安全性に寄与することが推測された。
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