研究課題
急性尿閉とその解除後膀胱では虚血-再灌流が生じる。その結果、膀胱の易刺激性が高まり過活動の状態になることを前年度に報告した(Mol. Cell. Biochem. 333 : 109-114, 2010)。心臓や腎臓等の臓器では、K_<ATP>チャンネル開口薬ニコランジルやクロマカリムがpreconditioningを誘導し、虚血-再灌流障害に対し臓器保護作用をもたらすことが知られている。今回、急性尿閉解除時における膀胱機能障害に対して、K_<ATP>チャンネル開口薬がpreconditioning効果を示すのかを検討した。8週齢の雌性SDラットを用いて、外尿道口をクランプし、膀胱頂部に膀胱瘻を作成した後5分間で2.5mlの生理食塩水を注入し、尿閉による虚血状態を誘発した。30分後に尿閉を解除して、60分間の再灌流状態を作り、これを急性尿閉モデルとした。このAURモデルに、薬物投与群としてニコランジル3および10mg/kg、クロマカリム100および300μg/kgを尿閉開始30分前に腹腔内投与した。また、対照として急性尿閉のみの非投与群と非急性尿閉のコントロール群の計6群で実験を行った。尿閉開始から解除60分後までの膀胱内圧および膀胱血流量を測定した後に膀胱を摘出した。膀胱平滑筋切片を作成し、高温槽にてKC1(100mM)による収縮とカルバコールの累積投与による最大収縮力(Emax値)とEC_<50>値を測定した。各群共に、膀胱内圧測定では生理食塩水注入1cc前後より急激に上昇し注入停止後に膀胱内圧は低下したが、高圧な状態が持続した。膀胱血流量は膀胱内圧上昇と共に低下し、尿閉解除と共に有意に上昇した。平滑筋収縮実験において、急性尿閉モデルではコントロール群に対してKCIおよびカルバコール刺激に対して有意な収縮力の低下が認められ、カルバコールに対するEC_<50>値は有意に上昇した。これらの変化はニコランジルおよびクロマカリムの投与で有意に抑制できた。急性尿閉とその解除における膀胱平滑筋障害は、K_<ATP>チャンネル開口薬であるニコランジルやクロマカリムの投与で改善することが示唆された。
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Mol. Cell. Biochem. 333
ページ: 109-114
Eur.J.Pharmacol. 635
ページ: 194-197