研究概要 |
ヒト外尿道括約筋衛星細胞におけるTGF-βの増殖抑制作用 【目的】TGF-βは骨格筋に対して増殖抑制作用を示すが、近年加齢に伴う骨格筋再生能力の低下にTGF-βが関与していることが報告されている。これまで我々は、加齢とともに外尿道括約筋細胞が減少する原因としてTNF-αの関与について検討してきたが、今回はTGF-βのヒト外尿道括約筋衛星細胞に及ぼす影響について検討した. 【方法】膀胱全摘除術時に採取したヒト外尿道括約筋を細切し,コラゲナーゼ処理後に初代培養した。抗NCAM抗体を用いたMACS法にて筋衛星細胞を分離培養し,SV40T抗原を導入し長寿化した細胞作成した。 この細胞にTGF-βを濃度依存的に添加して細胞増殖テスト及びFlow cytometryによる細胞周期解析を行った。Western blot法にてTGF-βのシグナル伝達経路であるSmadのリン酸化を検討し、さらに細胞周期関連タンパクの解析を行った。 【結果】TGF-βにより細胞増殖は有意に抑制された。Flow cytometryにて、ヒト外尿道括約筋衛星細胞はG0/G1期に蓄積していたが、sub-G1 populationは増加しておらず、アポトーシス誘導は認められなかった。Western blot法にてSmad3リン酸化の亢進,CDK inhibitorの発現亢進を認めた。一方、アポトーシス実行分子であるcaspaseの活性化は検出されなかった。 【考察】ヒト外尿道括約筋衛星細胞はTGF-βによってSmad3がリン酸化され、CDK inhibitorの発現が亢進することによって増殖が抑制されるものと考えられた。一方、TNF-αと異なりTGF-βでは、ヒト外尿道括約筋衛星細胞にアポトーシスの誘導はみられなかった。
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