研究概要 |
本研究の目的は、ウイルスベクターを用いて、神経栄養因子neurturinを神経損傷後の海綿体神経に導入し、勃起能回復や海綿体神経再生促進を検討することである。 1、ウイルスベクターと、ラット神経損傷モデルの作成 本研究で使用した複製欠損型単純ヘルペスウイルス(HSV)ベクターは、以前発表された同様の実験系(Gene Ther,2007;14:1344)で使用したものと同様に作成されたものを使用した。ラットの両側海綿体神経を凍結損傷させ、神経損傷モデルとした。その後、HSVベクターを使用してneurturinを神経損傷部に導入(HSV-neurturin)し、後に治療効果を検討した。 2、勃起能の評価と神経損傷(再生)の評価 神経損傷後2,4週目に、勃起能の評価として海綿体内圧/血圧比(ICP/AP)を測定した。その結果、海綿体神経損傷後は術後2週から有意にICP/APが低下、4週目でさらに低下した。神経再生の評価目的に、逆行性トレーサーであるFluorogold(FG)を組織採取7日前に投与し、骨盤神経節での発現を検討した。その結果、骨盤神経節でのFG陽性細胞数は4週目まで経時的に減少した。 3、治療効果の検討 HSV-neurturin導入後には、コントロールベクター投与群やウイルス非投与群に比し、用量依存性に有意にICP/APの回復が見られ、骨盤神経節でFG陽性細胞数の増加が見られた。 現在までの結論として、神経栄養因子neurturinの導入は、海綿体神経損傷後の勃起能回復、神経再生促進に対して有用と考えられた。
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