研究概要 |
平成20年度は、新規前立腺肥大閉塞モデルを5頭のビーグル犬に作製し、テレメトリーによって覚醒下の尿流動体検査を行い、膀胱機能を解析した。また、従来の即時閉塞モデル(別の5頭)も作製し、同様の検討を加えた。 新規閉塞モデルでは、ビーグル犬の前立腺をナイロンメッシュで包み0.6mg/dayのテストステロンを連日12週間投与することにより、前立腺が増殖するに伴い閉塞が徐々に完成していくことが特徴である。術後、2週、4週、6週、8週および12週で施行した尿流動体検査では、排尿筋収縮圧は平均値でそれぞれ、30.2,29.8,38.9,45.3および86.0cmH20となり、術後6週から有意に高くなり以後12週まで段階的に上昇した。このことは閉塞が徐々に形成されて来たことを示している。また、12週における排尿筋収縮圧は十分高く維持され残尿量も28.6±12.0mlで少なく、膀胱機能が十分代償されていた。したがって、この新規閉塞モデルは、臨床上最も良く遭遇する典型的な前立腺肥大症に類似していることが明らかにされた。 一方、従来の閉塞モデルでは、術後2週で排尿筋収縮圧は既に平均89.3cmH20まで上昇した。その後、4週から6週まで高圧排尿が続いたが、8週、12週には排尿筋収縮圧は36.3および25cmH20となり著しく低下した。残尿量は2週目で既に123±57mlもあり、12週目では平均235mlまで増加した。すなわち、従来のモデルでは急速に尿道閉塞が形成されるため、膀胱にかかる負担はきわめて大きく短期間に非代償期に移行してしまうことが明らかになった。臨床上、これは尿閉が見られる末期の前立腺肥大症と言える。
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