下部尿路閉塞(以下BOO)において、膀胱平滑筋が代償的に肥大することは知られているが、そのメカニズムについては明らかでない。今回我々はsignal transducer and activator of transcription 3(STAT3)に着目し、STAT3がBOOにおける膀胱平滑筋肥大に関与するかについての検討を行った。 雌性SDラットを用いて下部尿路閉塞モデルを作成した。1週後に下部尿路閉塞群、偽手術群それぞれの膀胱平滑筋を摘出し蛋白を抽出した後、抗体アレイを用いて蛋白発現を調べた。またSTAT3に対するsmall interfering RNA (siRNA)トランスフェクションの後、膀胱平滑筋細胞に、120%の伸長で周期的な機械的伸展刺激(1Hz)を与え、α-smooth muscle actinおよびSTAT3の発現を、免疫組織学的およびウエスタンブロッティング法で評価した。BOOモデルラット膀胱において1週間後には膀胱平滑筋肥大が確認され、64種の蛋白の発現が増加していた。ウエスタンブロッティング法にて、STAT3、bFGF、 NF-B、 α-smooth muscle actinの増加を確認した。また免疫組織学的に、機械的伸展刺激を加えた膀胱平滑筋細胞ではα-smooth muscle actinの増加が認められ、STAT3に対するsiRNAトランスフェクション群ではα-smooth muscle actinの増加が抑制された。これらより、STAT3が、膀胱平滑筋肥大の重要な役割を果たしている可能性が示唆された。
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