研究概要 |
一酸化窒素は血管内皮から産生される気体の神経伝達物質として同定された。一酸化窒素は生体内の様々な機能の調節に重要であることが明らかにされてきている。膀胱や尿道などの下部尿路の機能の調節においても、一酸化窒素は重要な役割を演じることが明らかにされつつある。一酸化窒素は3種類の合成酵素である神経型(nNOS),上皮型(eNOS),誘導型(iNOS)の合成酵素により産生される。一酸化窒素そのものとしては、下部尿路機能調節に重要とおもわれるが、3種類のNOSそれぞれが下部尿路機能に対してどのような役割をおこなうのかについては未だに明らかにされていない。 そこで今回我々は、一酸化窒素の合成酵素のノックアウトマウスを用いて、3種類のNOSの膀胱知覚および組織障害に対する役割を調べた。また今後、3種類のNOSの内2種類をノックアウトしたマウスを用いて、NOSの下部尿路機能に対する役割を詳細に調べる。 3種類の一酸化窒素合成酵素のノックアウトマウスを用いて、膀胱内生理食塩水持続注入による膀胱内圧測定を行う。まず、麻酔下に膀胱瘻を作成し、麻酔から回復するまで待つ。その後に無麻酔下に膀胱内に生理食塩水を持続的に注入し、膀胱内圧測定を行う。またサイクロフォスファミド膀胱炎モデルを作成して、組織障害に対するそれぞれのNOSの役割について調べる。同様の実験をダブルノックアウトマウスを用いて行う。 これまでの知見としてiNOS由来のNOが膀胱知覚に対して促進的に作用することが明らかになった。そのほかのNOSの役割について調査中である。
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