低侵襲性のため腹腔鏡手術が広く行われているが、気腹圧が腎機能へ及ぼす影響について動物実験で腎微小循環動態を観察し、実際の腹腔鏡手術で腎機能についての影響を検討した。 1)豚腎での気腹圧の検討:経腹的到達法にて腎周囲脂肪識を剥離し、腎実質表面を露出した。気腹圧を5mmHg→10mmHg→15mmHg→20mmHg→25mmHgと段階的に上げ、それぞれの気腹圧で腎尿細管周囲毛細血管赤血球速度を測定した。同じ気腹圧において同時に腎動脈本幹の血流を電磁流量計にて測定をした。気腹圧を上げるとともに、腎尿細管周囲毛細血管赤血球速度の減少を認めた。0mmHg(開腹)と10mmHg、10mmHgと15mmHgでは有意差を認めた。気腹圧が25mmHgに達するとそのほとんどの赤血球に動きが認められなかった。この際、腎動脈の血流速度は変化を認めなかった。 2)腹腔鏡手術での腎表面酸素濃度の検討:気腹圧12mmHg (n=7)、 8mmHg (n=7)で腹腔鏡手術を行った症例について経時的に腎表面酸素濃度を測定した。8mmHg群では、酸素飽和度の変化が見られなかったが、12mmHg群では気腹開始1時間での酸素飽和度に対し2時間ではほぼ100%であったが、3時間では95%と有意差はみられないがやや低下がみられた。 3)腹腔鏡下Donor腎摘の気腹圧が受腎者での腎機能に及ぼす影響:気腹圧が12mmHgで行った群(A群)と8mmHg(B群)での受腎者での術後1週間の血清CrはA群1.65±1.5 mg/dl、B群1.26±0.7mg/dlであり、術後1週間でのERPFはA群で229±71ml/minに対し、B群で252±52ml/minでありB群の方で良好であった。 (結論)気腹圧が高くなると腎微小循環に影響を与えることが示された。12mmHgを超えて長時間の手術になると腎機能にも影響を及ぼすことが示唆された。
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