研究概要 |
性欲は本能の一つであり極めて重要であるが、ヒトの性欲中枢についてはこれまで十分に解明されたとはいえない。我々はこれまでに性的刺激ビデオを視聴覚しながらPET撮影を行い、性的興奮期には小脳虫部、プラトE一期には被殻が特異的に活性化されていることを見いだしている。しかし、これまでの解析は、被験者が性的刺激ビデオをどれだけ集中して視聴したかにより、結果が左右される危険性を含んでいた。しかし、これまで、性的関心度を解析する方法はなかった。今回、性的刺激ビデオを視聴している最中の視線をリアルタイムに追跡する装置を考案し、視線軌跡を解析することで、性的刺激に対する興味度合いを評価するした。視線解析装置は、肢体障害者の意思伝達用に開発された、Quick Glance2TM(Eyetech Digutal System Inc., Mesa, AZ USA)を改良した。まず、視線を追跡するソフトウエアを発売元と共同で開発し、視覚ビデオに対する視線を数値化し、解析方法の標準化,安定性を目的に、最初に正常コントロールで行った解析の妥当性を検討することとした。本装置を用いて、性的に問題のない男女11名ずつが、性的ビデオを視聴した際の性的関心領域を解析、比較したところ、性的刺激度が強いビデオにおいて性的関心領域の性差が明らかとなった。すなわち、男性は女性の顔に関心を持ち(57.4%vs.37.6%;p<0.05)、女性は男性の体に関心を持つ(1.0%vs.5.5%;p<0.01)ことが示された。また女性は性的表現領域以外の背景などを視ている時間が有意に多く、男性を対象に作成された性的ビデオに対してさほど興味を抱かない、もしくは差恥心からあまり凝視できない可能性が示唆された。
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