研究概要 |
DNA修復欠損マウスの精子形成不全における精巣幹細胞のゲノム維持機構に注員し解析を進め、以下の実験かち結論を得た。A群色素性乾皮症(XP)遺伝子(Xpa遺伝子)を欠損したXpa遺伝子欠損マウス(Xpaマウス)が、XP患者の皮膚癌だけでなく、2年令で発育不全、悪性腫瘍の多発、精子形成不全を示し、XPの病態モデルとなることを発表した(DNA Repair, 7 : 1938-50, 2008)。 本研究開始当初、12ヶ月令XPAマウス精巣で精巣幹細胞に特異的な遺伝子発現の低下があり精巣幹細胞の機能低下を考えたが、さらに3ヶ月令、6ヶ月令精巣の遺伝子発現の検索において顕著な差がみられなかった。しかし、3ヶ月令、6ヶ月令および12ヶ月令XPAマウス精巣の経時的な遺伝子発現の詳細な分析から、DNA修復、細胞周期(チェックポイント)、細胞死に関わる遺伝子の発現異常が検出された。さらに、これら遺伝子発現異常を示す同月令のXPAマウス精巣病変を精細管のステージも考慮して調べたところ、興味深いことに組織変性と細胞増殖の混在した病変が見られ、今後の病態解明につながる糸口になると思われる。一方、精巣組織全体の遺伝子発現の解析結果が、各精細管の遺伝子発現異常にどの程度関与しているかを注意深く検討する必要がある。今後、上記遺伝子発現解析の確認のとれたDNA修復欠損マウスとXpaマウスとの2重欠損マウス精巣の解析によって、DNA修復欠損マウスの精子形成不全における精巣幹細胞のゲノム維持機構の病態が解明される。
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