研究概要 |
ブタ臓器をヒトに移植する異種移植では、超急性拒絶反応により移植臓器は急速に機能廃絶に陥る。Massachusetts General Hospital(MGH, Boston, Massachusetts, USA)のTransplantation Biology Research Centerでは、超急性拒絶反応の原因分子である自然抗原[galactose al,3-galactose,(Gal)抗原]を完全に除去したGalT-KO MGHミニブタを作製し、臨床応用を考慮し、non-human primateのヒヒへの腎臓や心臓の移植実験が行われている。今のところ、腎臓移植は免疫抑制療法では1ヶ月の生着が、免疫寛容療法では83日間の正常の腎機能を保ちながらの生着が得られている。また、心臓移植では免疫抑制療法により約6ヶ月間の生着が得られたが、最終的には機能廃絶に陥った。今年度は、移植心臓の機能廃絶の機序の特徴を免疫病理学的に解析した。異種移植された8症例の移植心臓(平均生着期間は78日、最長生着期間は179日)を検討した。全ての移植臓器は最終的には機能廃絶に陥り、その機能低下には、急性抗体依存性拒絶反応による血栓性微小血管傷害が大きく関与していた。さらに心筋間や微細血管にT細胞の浸潤が認められ、急性細胞性拒絶反応の進展も認めた。また、持続する抗体依存性拒絶反応や細胞性拒絶反応による慢性拒絶反応も認められた。異種心臓移植においても、同種心臓移植と同様に、急性抗体依存性拒絶反応、急性細胞性拒絶反応や慢性拒絶反応により移植心臓の機能が廃絶することを明らかにした。これらの拒絶反応は、同種移植の場合には免疫抑制療法により制御することが可能である。異種移植におけるこれらの拒絶反応の特徴を明らかにし、制御することができれば、臨床応用に向けて大きく前進することになる。今後は、拒絶反応や移植臓器廃絶の機序の詳細を検討する予定である。
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