研究概要 |
臨床の移植医療の問題点としてドナー不足が上げられる。その問題点の現実的な解決方法としてブタ臓器をヒトに移植する異種移植が考えられている。しかし、この異種移植では、超急性拒絶反応により移植臓器は急速に機能廃絶に陥る。この問題を根本的に制御する方法としてMassachusetta General Hospital(MGH,Boston,Massachusetts,USA)のTransplantation Biology Research Centerでは、超急性拒絶反応の原因分子である自然抗原[galactose □1,3-galactose,(Gal)抗原]を完全に除去したGal T-KO MGHミニブタを作製し、前臨床研究として、non-human primateのヒトへの臓器移植実験が行われている。今年度までは、心臓移植後の移植心臓の機能廃絶には、自然抗原に対する抗体以外の獲得性抗ドナー抗体に対する急性抗体依存性拒絶反応による血栓性微小血管傷害が主要な原因であることを明らかにしてきた。今年度は、腎臓移植臓器の長期免疫抑制療法と免疫寛容獲得療法による腎臓移植の移植腎臓の病理学的な特徴を比較検討した。長期免疫抑制療法による移植腎は約1ヶ月で機能廃絶に陥ったが、免疫寛容獲得療法による腎臓移植では、腎機能を保ったまま83日以上の生着を認めた。長期免疫抑制療法による腎臓移植で、機能廃絶に陥った移植腎臓の病理像は獲得性の抗ドナー抗体が関与した急性抗体依存性拒絶反応、細胞傷害性T細胞の浸潤による急性細胞性拒絶反応や慢性拒絶反応が進展していることを明らかにした。一方、これらの拒絶反応は、安定した免疫寛容導入が行われた場合の移植腎臓には観察されず、同種移植よりも強力に拒絶反応が誘導される異種移植には、積極的な免疫寛容導入療法が必要であると結論した。
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