男性ホルモン(アンドロゲン)とアンドロゲンレセプター(以下AR)は精巣における精子形成(spermatogenesis)と精巣上体における精子成熟(sperm maturation)に重要な役割を果たしていることは広く知られている。そこで我々は、アンドロゲンシグナリングを精巣上体特異的に修飾することにより、精巣におけるアンドロゲンおよび精子産生を阻害することなく、男性特異的に精巣上体機能(受精能獲得)を破壊できるのではないかと考え、Cre-loxPシステムを利用して、精巣上体特異的にアンドロゲンレセプターを破壊された遺伝子改変マウスの作製および機能解析を行い、精子成熟機構に関与する遺伝子群を同定する事を最終目的とした。 すでに精巣上体特異的にタモキシフェン作動性Creを発現するトランスジェニックマウスの作製を行い計8ライン作出完了した。これらのマウスがCreリコンビナーゼをタモキシフェン制御下に発現するか確認するためにROSA26-EGFPと掛け合わせた。米国JACKSON研究所より購入したROSA26-EGFPマウスはCre発現領域に一致してEGFPを発現するように遺伝子改変したマウスである。さらに、このマウスと精巣上体特異的Cre発現マウスから産出されたマウスが8週令に達し次第タモキシフェン投与した後精巣上体を取り出しEGFP発現を調べところ、予想外に精巣上体尾部にEGFPの発現を認めた。このタモキシフェン作動性Creマウス(8ライン中3ライン)と東京大学加藤茂明教授より供与されたコンディショナルARノックアウトマウスとを掛け合わせて精巣上体内精子を解析したが、これまでのところ精子運動能等の変化は認めていない。
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