研究課題
子宮内膜症は発症・進展機序が不明で予防・治療に苦慮している。今回の研究では、本疾患の発症・進展メカニズムとして重要である免疫学的側面について検討した。近年、新たなT細胞であるTh17細胞が発見され、我々は本細胞が子宮内膜症の進展に関与しており、病巣局所に集積していることを示してきた。しかしながら、Th17細胞の子宮内膜症病巣への集積機序は不明であった。そこで、我々はTh17細胞が発現するケモカイン受容体CCR6がそのリガンドであるCCL20の影響を受けて集積すると考えた。本研究では、まず、子宮内膜症病巣でTh17細胞がCCR6を発現しており、CCL20が周囲の間質細胞に発現していることを示した。ついで、CCL20が末梢血よりTh17細胞を遊走させることを示した。また、培養系にて炎症性サイトカインであるIL-1β, TNFα, IL-17Aが子宮内膜症間質細胞からのCCL20産生を促進し、特に、TNFαとIL-17Aが相乗作用を持つことを示した。また、これらの作用が各種MAPキナーゼ阻害剤で抑制されることも示した。以上の所見より、子宮内膜症の局所環境として知られている炎症が各種サイトカインを介して子宮内膜症間質細胞からのCCL20産生を増やしてTh17を局所に集積させることが示唆され、これにはIL-17Aを介するフィードフォーワード作用も関与していると考えられた。子宮内膜症におけるTh17細胞の役割を考えると、本研究の成果は子宮内膜症治療に多くの示唆を与えるものと考えられる。従来の炎症抑制、MAPキナーゼ阻害といった治療概念が子宮内膜症におけるTh17細胞の作用の抑制に適応される他に、CCL20/CCR6をターゲットとする治療戦略の可能性が提示された。
すべて 2009 2008
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件) 学会発表 (2件)
Endocrinology 150
ページ: 350-356
Fertil Steril 91
ページ: 933
Hum Reprod 24
ページ: 408-414
Am J Pathol 173
ページ: 463-469
Fertil Steril 90
ページ: 2018
ページ: 1747-1757
J Pharmacol Sci 150
ページ: 422-425