肺サーファクタント製剤と胎脂を用いて作成したサーファクテン・ミセル溶液の羊水腔内投与は、ウサギ胎仔小腸を、形態的にも機能的にも成熟させることが明らかとなった。今年度は、サーファクテン・ミセル溶液のうち、どの成分が、どのような機序で効果を発現するのかを検討した。 実験1.蛍光標識モデルの作成:サーファクテン・ミセル溶液の体内動態を調べるために、サーファクテン・ミセルを簡略化した構造を持つ2種類の蛍光標識モデルを作成した。サーファクテンに相当するものとして、リン脂質二重層の外側表面に付着して蛍光するPKH26(Sigma-Aldrich Co.)とLiposome(COATSOME EL;日本油脂株式会社)を用いて、蛍光標識モデル1を作成した。また、胎脂に相当するものとして、パルミチン酸に蛍光標識を施したBODIPY FL C16とLiposomeを用いて、蛍光標識モデル2を作成した。余剰の蛍光色素は、超遠心分離を行い、除去した。この溶液を220-nmのフィルターにかけたものを、以後の実験に用いた。実験2.蛍光標識モデルの投与実験:妊娠ウサギの羊水腔内に、2種類の蛍光標識モデルを投与した。5日後に胎仔小腸と肝臓を摘出して、検討に供した。ウサギ胎仔小腸上皮は、蛍光標識モデルを取り込み、励起光を発した。肝臓には、蛍光モデルは到達しなかった。サーファクテン・ミセル溶液は、ウサギ胎仔の小腸上皮に局所的・直接的に作用する可能性がある。
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