平成20年度に我々が新たに開発した亜鉛コプロポルフィリン(ZnCP-)の大量合成法(特願2008-520532「ポルフィリン(Y)の多価金属化合物の新規製造方法」)を用いて研究成果をあげた。 (1)これまで量が少なくて正確に求めることの出来なかった合成ZnCP-Iの純度を、(株)東レリサーチセンターに外注することによって決定した。これによって、従来は推定値でしかなかった、全国医療機関から送られてくる、羊水塞栓症、あるいは羊水塞栓症疑い患者血清中のZnCP-I濃度が、より正確に求めることが可能になった。 (2)新規大量合成方法で得られたZnCP-Iを用いて抗体の作成を試みたところ、ZnCP-Iに対する抗体を産生するいくつかのクローンを得ることができた。この結果は、羊水塞栓症などの血清学的研究に、新たな手法を提供する可能性が示唆される。 (3)平成15年8月から、日本産婦人科医会からの委託を受け開始した羊水塞栓症血清検査全国登録事業により測定した、羊水塞栓症あるいは羊水塞栓症疑い患者血清中の数は、平成21年度は130検体で、平成15年の開始時からの総計は333検体になった。 (4)羊水塞栓症血清検査全国登録事業で送られてきた血清には様々症例が見られ、それらのSTN、Zn-CPI、IL-8、C3、C4等の検査データが蓄積されつつある。これにより、羊水塞栓症をはじめとした、産科領域での種々疾患のリスクファクターを抽出することか出来る可能性が示唆される。
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