研究概要 |
子宮内膜症は生殖年齢女性のおよそ10%に発生し,疼痛と不妊を惹き起こし現代女性のリプロダクティブヘルスを著しく損なう疾患である。本症の発生頻度の増加が指摘されており、少子化や晩婚化といった女性のライフスタイルと密接に関連することから,現代病として社会的関心も高い。本研究では、私どもがすすめてきたサイトカインによる子宮内膜症の増殖進展機構の更なる解明と異所性に内膜細胞が生存していく上での細胞死(アポトーシス)の役割を検討した。類腫瘍性格を有する本症の進展機構を明らかにすることで、本症の病態の理解と新しい治療戦略の確立につながるものと考えられる。子宮内膜症細胞が異所性に生存していく上でのアポトーシスの役割について検討した。炎症反応惹起あるいはアポトーシス誘導モデルとしてLPSとStaurosporin(SS)を添加し、パスウェイ特異的アレイにより遺伝子発現プロファイリングを行った。LPS添加は、子宮内膜症細胞のTNFα遺伝子発現を対照の7倍に増加させた。LPS添加後の子宮内膜症細胞でみられたIL-8とcIAP-2の強発現は、TNFαノックダウンにより減弱し、細胞増殖能も対照の85%に抑制された。子宮内膜症細胞では、IAP familyに属するcIAP-l、Survivin、XIAP遺伝子の強発現がみられた。SS添加により、Survivin発現がESCでは増強したがEMSCでは減弱し、生細胞数もESCで有意に多かった。内膜症細胞の増殖ならびに薬剤誘導性アポトーシス抵抗性には、TNFαとIAP familyが関与することが示唆された。現在は、目的遺伝子のsiRNA導入による影響、アポトーシスのマーカーであるCaspase^<-3>と-7蛋白発現への影響について解析している。
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