研究概要 |
子宮内膜症は生殖年齢女性のおよそ10%に発生し,疼痛と不妊を引き起こし現代女性のリプロダクティブヘルスを損なう疾患である。本研究では、私どもが進めてきたサイトカインによる増殖進展機構の更なる解明と異所性に内膜細胞が生存していく上での細胞死の役割を検討している。 炎症反応惹起あるいはアポトーシス誘導モデルとしてLPSとStaurosporin (SS)を添加し、アポトーシスcDNAアレイでスクリーニングを行い、IAP familyの遺伝子発現量をRT-PCRで検討した。SS添加により、子宮内膜細胞では生細胞数が50%に減少したが、内膜症細胞では70%とアポトーシス感受性の低下がみられた。子宮内膜細胞では、SS添加によりCaspase-3および-7蛋白の強い活性化がみられたが、内膜症細胞ではみられなかった。IAP familyの遺伝子の中では、BIRC-5 (survivin)の発現がSS添加により増強したが、BIRC-2、-3、-4に関しては発現に変化はみられなかった。子宮内膜症細胞への、survivinsiRNA導入による遺伝子発現抑制により、アポトーシス細胞比率の増加と、Caspase-3および-7蛋白活性の増強を認めた。 以上の結果より、子宮内膜症細胞はアポトーシス抵抗性を有しており異所性生存に適した性質を有していること、この特性にはsurvivinが関与していることが示唆された。
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