妊娠ラット子宮平滑筋において観察されるATP受容体電流が陣痛周期制御あるいは硫酸マグネシウムの子宮収縮抑制機構のひとつであることを報告してきた。また、この受容体は炎症を伴う早産モデルで発現が亢進することより早産との関連も示唆されている。子宮ATP受容体はP2Xチャンネルと推測してきたが、今回子宮筋で主に機能しているP2Xサブタイプを確定するために、ラット子宮筋からクローニングした各P2Xチャンネル遺伝子を培養細胞に発現させ、その電流と子宮筋ATP受容体電流を比較した。[方法]妊娠19日ラット子宮筋より作成したcDNAライブラリーでP2XのmRNAの発現様式をPCR法により観察した。強発現したP2X4、P2X7チャンネルをクローニングし、遺伝子をEffectine法によりCOS-7培養細胞に導入した。24-36時間の培養後単離させたCOS-7細胞からパッチクランプ法により電流を記録した。[成績]各遺伝子を導入したCOS-7細胞にATPを投与すると電流が濃度依存性に活性化されたが、P2X4チャンネルはATPに対して脱感作現象を認め電流は経時的(<1分)に減衰した。一方でP2X7チャンネル電流は減衰せず子宮ATP受容体電流と同じく矩形電流であった。P2X7チャンネルは各種アゴニストの効果も(αβ-MeATP>ATP>2MeSATP>UTP>GTP>ADP)同じであり、P2阻害剤スラミンとP2X特異的阻害剤PPADSに対しても同様の感受性を示した。イオン透過性もK>Cs>Li>Naであり子宮平滑筋ATP受容体と一致していた。[結論]P2X7チャンネル電流は子宮平滑筋細胞で観察されるATP受容体電流と性質が一致することより、P2X7チャンネルは子宮平滑筋ATP受容体の主体と考えられ、子宮収縮制御機構や早産との関連が示唆された。
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