研究概要 |
血管内皮前駆細胞と絨毛細胞におけるpIClnの機能の違いは? 1) 血管内皮前駆細胞におけるpIClnの発現は培養上清中に産生されるsoluble Flt-1量と正の相関を示していたことから,pIClnによるsoluble Flt-1の産生促進作用が推測された。このメカニズムを証明するために培養した血管内皮前駆細胞株にpICln DNAをtransfectすることによって培養上清soluble Flt-1濃度に変化がでるかどうか検討した。その結果,soluble Flt-1の産生は促進されることが分かった。pIClnによるmRNAのalternative splicing促進作用によってsoluble Flt-1の産生が増加することが分かった。すでに多施設によって確認された血管内皮細胞におけるpIClnによるsoluble Flt-1産生促進作用とともに,血管内皮前駆細胞は胎盤内においてpIClnが増加する環境下でsoluble Flt-1を増加させることによって妊娠高血圧症候群の病態形成に関与していることが考えられる。 2) 一方,絨毛細胞におけるpICln発現と培養上清中のsoluble Flt-1濃度との間には負の相関が認められた。pICln DNAをtransfectすると血管内皮前駆細胞と異なり,soluble Flt-1産生を抑制していた。この結果をさらに確認するためにpIClnのsiRNAを細胞内に導入することによってRNAのsiencingを行ったところ,培養上清中のsoluble Flt-1の濃度は増加していた。このことから絨毛細胞におけるpIClnのsoluble Flt-1に対する作用は血管内皮系の細胞とは逆であり,胎盤内では相互作用によってsoluble Flt-1の産生を調節していると考えられる。
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