研究概要 |
血小板活性化因子(PAF)は、着床を含め多くの生殖機構やその病態に関わっている。ヒト胚の脱落膜への侵入に際し、胚由来PAFの絨毛および脱落膜における血管新生への役割を明らかにすることを目的として、絨毛細胞または脱落膜細胞の培養系において検討した。子宮筋腫摘出時に採取された子宮内膜を細切後、collagenase処理後、80μmメッシュを通過させて間質細胞を分離。また、初期妊娠や子宮外妊娠の子宮内容除去術時に採取された絨毛または脱落膜を同様にcollagenase処理し、非連続的比重遠心法により絨毛細胞または脱落膜細胞を分離した。得られた絨毛細胞および脱落膜細胞を無血清のPRMIまたはIMDMの培養液で2×10^5cells/wellで培養した。培養上清中のVEGF、basic FGF、angiogeninをELISA法を用いて定量した。Carbamyl-PAF(C-PAF)を絨毛または脱落膜細胞の培養系に添加し、培養上清中のVEGF、basic FGF、angiogeninを同様に定量した。C-PAF刺激下の絨毛または脱落膜細胞培養上清中のTSP-1蛋白の産生量ををウエスタンブロット法で解析した。上記のVEGF、basic FGF、angiogeninの産生に及ぼすPAF receptor antagonist(Y-24180, CV2086)の影響を検討した。C-PAFは、絨毛および脱落膜細胞において濃度依存性にTSP-1以外のすべての産生を促進した。TSP-1へのC-PAFの効果は認められなかった。C-PAFによるこれら因子の産生促進作用は、Y-24180, CV2086によって、ほぼ完全に阻害された。PKC activatorであるTPAも絨毛や脱落膜での血管新生因子産生をすべて促進した。TPAまたはPAFによる血管新生因子発現促進作用はH-7により遮断された。これらの結果から、胚由来のPAFには、絨毛および脱落膜に対してPKCを介した血管新生促進作用があることが示唆された。
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